農家の土地を売る際のコツ

現在は農業に従事する人が少なくなっているというのは、一般的にも良く知られた事実でしょう。子供が実家の農家を継がず、親の農地を何とか売却したいと考えているケースも多いかもしれません。しかし、農地保護の国策との兼ね合いもあるために、農地を売却することはかなり困難です。

そこでこちらでは、農地を売却する際のコツなどについて解説します。

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耕作放棄地や休耕地が増えている農地

農業に従事している人の、平均年齢をご存知でしょうか。何と65歳を超えているのです。そのような中、病気になって寝たきりとなってしまう高齢の農業従事者も増えています。もし後継者がいれば、寝たきりとなっても農業自体は続いていきますが、後を継ぐ人も不足しているために、畑や田んぼはそのまま放置されてしまいます。

そのようにして放棄された農地は、耕作放棄地や休耕地などと呼ばれています。現在、耕作放棄地や休耕地は、農地全体の1割を超えるという非常に深刻な事態となっています。

農地価格に関する現状

もし実家が農家で、耕作放棄地や休耕地があるのであれば、すぐにでも売りに出したいところでしょう。しかし、残念ながら農地の相場価格は年々低下しているという状況にあります。なぜなら、売りに出される耕作放棄地や休耕地などが多いからです。

また、耕作放棄地や休耕地は手入れが行き届いていないため、どうしても価格が下がってしまいます。仮に、少し良い土地があったとしても、そのような農地は国の保護下におかれて、売りに出されることが滅多にありません。

また、都市部の方が農村地よりも農地価格が高いという現状もあります。平成29年の調査では、都市部にある田んぼ10アール当たりの価格が336万4,000円であるのに対して、農村部では120万7,000円でした。

また、畑に関しては、都市部が322万2,000円に対して、農村部は89万1,000円と、大きく差がつく結果となっています。このように都市部の方が農地価格が高いと、農地に対する需要が都市部は大きいのかと思うかもしれません。

しかしそうではなく、農地に対する需要自体は、やはり農業が盛んな農村部の方が多いです。それにも関わらず、ここまで農地価格に差が出る要因は、アクセスにあります。都市部の方が農地に対するアクセスが良いため、それが価格を押し上げる結果となっているのです。

農地はそのままでは売却が困難

前述のように、農地価格の現状を見ると、農地を売却して利益を出すことは特に農村部では難しくなっています。加えて、農地は簡単に売ることができません。農地の売却に関しては「農地法」という法律で規定がされています。

農地をそのままで売却するには、原則として5反以上の農地を耕作している農家が相手でないと、許可が下りないようになっています。つまり、売る相手がかなり限られてしまいます。また、農地は昔から近しい者同士や親族間などでやり取りすることが多く、通常の宅地のようにネットで宣伝するという形は現在でもあまりとられていません。

これらの事情のため、農地の売り手を見つけることはかなり困難です。

転用すれば農家以外にも売ることができる

農地を農地のままで売却することは困難ですが、実はもう1つ、農地を売却する方法があります。それが、用途を農地から変更して、土地として売りに出すことです。用途の変更は「転用(てんよう)」と呼ばれます。転用すれば、ネットという手段も利用して売り手を見つけやすくなるでしょう。

但し、全ての農地で転用が認められるわけではありません。立地基準と一般基準というものがあり、それぞれ細かく転用のための条件が定められています。立地基準というのは、あらかじめ定められた農地の区分によって転用できるかどうかを決める基準です。

農地の区分は、農用地区区域内農地・甲種農地・第1種農地・第2種農地・第3種農地の5つに分けられています。農用地区区域内農地と甲種農地、第1種農地は原則として転用が不可です。但し、第1種農地で転用の用途が公共事業の場合には、例外的に転用ができます。

第2種農地は一部制限があるものの、転用はできます。第3種農地は転用が可能です。立地基準について簡単にまとめると、農地として優れていて大規模なものの場合には転用が難しくなります。そして、市街地の小さな農地ほど転用が可能ということになります。

もう1つの一般基準は、どのような用途に転用するかという点に着目した基準です。色々と内容が定められていますが、「転用後の土地がしっかりと使用されるかどうか」というのが基本的なチェックポイントです。

農地転用後の売却における注意点

農地を転用する理由として、他者に売却したいというだけではなく、所有者自身が他の用途で使用したいという理由もあるかもしれません。しかし、他者に売却するために転用する際は、転用後に自分で使用してから売却ということは認められていません。

転用後はすぐに売りに出すことが必要ですので注意しましょう。ここで言う「自分で使用」とは、他者のために宅地化することも駄目という意味です。「土地を整備してから渡す」などの約束をしてしまうと、売却できなくなりトラブルとなるため注意しましょう。

農地を売却する際の手続き方法

では、具体的に農地を売却する際の手続きの流れについて解説しましょう。まず、農業委員会に許可申請を出します。農業委員会は各自治体に属している組織です。ここに、農地のままで売却する時には「売却許可申請」を、転用したのちに売却する際には「転用許可申請」をします。

許可が下りるまで大体1~2カ月かかりますので、申請結果を待つ間も並行して売却手続きを進めていきます。売却相手が見つかったら、「所有権移転請求権仮登記」を行いましょう。これは農業委員会へ出した申請の、結果が出る前に行う移転登記です。

そのため、「仮登記」となっています。無事に農業委員会の許可が下りれば売買契約も成立し、売却代金の授受と所有権移転の本登記をすることになります。もし、仮に農業委員会の許可が下りなければ、売買契約は無効です。

売ると言っていたものを売れなくなるわけですから、通常の不動産取引では問題となり違約金が発生する状況です。しかし、農地売買においては違約金は支払わなくても良いことになっています。手付金も、そのまま返還して問題ありません。

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農地を売却した際にかかる税金

農地売却にかかる税金の種類は、通常の不動産取引と同じように印紙税や仲介手数料、そして譲渡所得税です。仲介手数料は法定で上限額が設定されており、取引額が200万円以下の場合には、売却価格の5%です。さらに、そこに消費税がかけられます。

譲渡所得税は、土地を取得した時の価格よりも売却価格の方が高く、利益が出た時にかかります。しかし、取得価格が不明な農地もあるかもしれません。その時は、「市街地価格指数」というものを使って概算値が計算されます。

最初に述べたように農地の価格相場は下落傾向にあります。よほどアクセスの良い農地以外、譲渡所得税が発生しないケースも多いでしょう。